ーーー芦屋家から歩いて二十分程の、小さなダンス教室。





土曜日でも、大人の女性や主婦がほんの数名。




色とりどりのシルクヴェールを操りながら、表現力豊かに手足を動かしている。




「腰はそのまま円を描くように!上半身はなるべく動かさないようにしてくださいね!」




皆の目の前にいるのは、二十そこそこの長身の先生。


すらりとした体躯に、波打つ豊かな茶髪。
日本人離れした、見た目麗しい美女だ。



自身も体を揺らしながら、時々、生徒の体に手を添えて動きを指導している。




「朝川先生、ここのステップが上手く出来ないのですが…」





生徒の一人がちょっと不安げに手を上げると、彼女は軽やかにそちらへ向かって、生徒にやってみせるように指示した。


それらを見る彼女の横顔は、真剣そのもの。




ふいに、教室の扉が開く音がして、彼女は横を向く。
少し、厳しく引き締められていた表情が、途端に緩んだ。







「いぶちゃん、踊りに来たぁー!」




ドアの隙間から顔を出して、にこぉっと笑うのは、彼女の妹の幼馴染み。