変わらない毎日を過ごしていたある日の事。
父影正が城をあけることになった。


一月ほど戻ってこれない大変な任を果たすため従者を連れ早朝に出て行ったのだ。




「千代、入るわよ」

「母上!」




千代の部屋を訪ねてきたのは、母の沙代であった。
千代は退屈に床に預けていた身体を起こし母である沙代を迎え入れた。




「母上、私の部屋を訪ねるだなんて・・・。どうされたんですか?」




同じ城の中にいてもあまり会う事のない二人。
久しぶりの母に千代は喜びを隠せない。




「千代、聞きなさい。あなたはこの世を知らな過ぎる。父上に逆らえず、ここまで来てしまいましたが、このままではいけないわ」

「母上?」

「あなたをこのまま鳥籠のようなこの場所に閉じ込めておきたくないのです」





沙代は千代の肩を強く掴み、訴えかけるように続けた。
そんな沙代の様子に千代は戸惑い視線を泳がせた。