「ここは、鬼羅の家なのですか?」
「・・・それがどうした」
「いえ、素敵なお家だなと思ったんです」
「どこがだ」
怪訝そうな瞳を千代に向け、ドカッと持っていた荷物を床に置くと千代をすり抜ける。
千代のペースに巻き込まれまいと平静を装う。
「鳥のさえずりが聞こえる森の中にあるお家、とてもすてきだわ!」
「脳みそがお花畑のようだな」
あざ笑うように鬼羅が言う。
なぜ自分がこのような所で生きているのか。
こんな生活を強いられているのか。
そんな事、何一つ知らない場所でぬくぬくと育ったのであろう少女。
沸々と苛立ちが湧き上がってくる。
「あ・・・!血が出ています!」
千代の視線が鬼羅の腕に注がれる。
鬼羅の腕の着物の袖は無残に切り口が見え、その先に見える腕は赤く血に染まっていた。
痛がる様子も見せなかった鬼羅に、今になって気づく。
慌てた様子で千代が駆け寄りその腕に手を伸ばす。