拓人は、開け放たれた窓の縁に足をかけている。

「もしかして、そこから入ってきたの?」

「…うん」

拓人はこちらに手を伸ばした。

「ほら、おいで」

私は差し出された手に、そっと手を重ねた。

優しい温もりが、私の手をぎゅっと包んだ。

「いくよ」

私は頷いて、下を見た。

私の病室は一階。

怪我の心配はない。

あれ、そういえば、私が逃げないようにはめられていた鉄格子はどこへ行ったんだろう。

拓人は先に地面へ降りて、私に両手を伸ばした。

それを見たら、そんなことはどうでもよくなった。

私は窓の縁に腰をかけて、拓人目掛けて飛び降りた。

拓人はしっかりと私を抱きとめてくれた。