詩月は数段上っては、一息つき胸に手を当て、呼吸を何度も整え、呼吸が乱れるのを抑えながら石段を上りきると、理久がホッとし脱力する詩月の体を支えた。


「……ごめん」

言いながら胸に手を押し当てると、理久は何も言わずに僕の背を摩った。

先を歩いていた安坂と郁子は、既にお詣りの列に並んでいる。


「…理久、休んでるから……お詣りしてきて…」


「バカっ、俺はお詣りに来たんじゃない」

詩月は理久の顔をマジマジみつめる。


「じゃあ、何しに?」


「は、花火を……」


「花火?」

詩月は理久の手にしっかりと握られた、ビニール袋に目を落とす。


「……何で花火?」

理久が小さく溜め息をつき、チッと舌打ちをする。


「花火大会、終わっちまったからな」

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