でも、詩月はそんな理久のくさい台詞の中に、曇った空から優しい雨が降るような、雨空の隙間から一筋の光が陽射し込むような暖かさを感じている。


理久は、検査検査の毎日がやっと明けた時には「お疲れ。今回は結構きつかっただろ?」と、看護師よりも先に声をかけに来た。



「まあ、外は真夏で汗ダクだから。ここで涼めただけ得したって思えよ」と、すまなさそうに笑った。


「結果、あまり良くなかったんだろう。……薬が幾つか変わっているし、入院し始めた頃は歩いちゃいけないって、車椅子を用意されて、ナースコールを強いられた」

詩月は素直になれず、わざとみたいに理久にぼやく。

「さあな、俺はお前の主治医ではないし、親父から検査のことは何も聞かされていないからな」

理久は飄々としてこたえる。