詩月は理久に言わせれば「お前は良い患者すぎる」と言われる。

それは理久が健康に恵まれているから、そう言えるんだと詩月は思う。


理久は、1人ぼっちの殺風景な病室に、たびたび顔を出す。

医者でも看護師でもないのに詩月の様子を窺いに来る。

理久は詩月を無断で中庭に連れ出したり、詩月を誘って屋上に上ったりする。

そのたびに、詩月の主治医でもある、理久の父親に叱られ平謝りしている。

なのに「親父にとってお前は患者だけど、俺にとっては弟みたいなものだからな。お前の湿気た顔は見たくない」そう言って、クシャクシャと詩月の頭を撫でる。



「こんな窓枠の小さな空で満足なんてするなよ。もっとデッカイ青空を見上げて、おもいっきり深呼吸してみろよ」

理久は力強い口調で言う。

――ったく、くさい台詞だ

詩月は思う。