「かゆっ」

丁度風呂へ入ろうとして下着を脱いだ時に気づいた。

それは局部近くのヘソ下にぽつんとできていた。

いのまに蚊に刺されたのだろう、そう思う程度のその『デキモノ』を僕は何気なく掻いていた。

「…あれ?」

ふと、気づく。
今日は2月7日。
季節は冬だ。

「おいおい、季節はずれにも程があんだろ…」


はじめの印象はこんな感じだった。

『季節はずれの蚊の吸血』

そんなはずはなかった。
この時、もっとこの『デキモノ』を疑うべきだった。


『デキモノ』ができてから10日後…
この日はじめて『デキモノ』に不信感を抱いた。
刺されてから10日も経つというのに一向に治らない、しかも10日前よりあきらかに大きくなっているからだ。
最初はゴマつぶくらいの大きさだったのが、今や大豆くらいの大きさの『デキモノ』になっていた。
しかし、この時の僕は掻きすぎが原因だろうと思うだけだった。
というのも、昔から蚊に刺されると普通のひとよりふくらむ体質であったからだ。

しかし、さらに5日後
『デキモノ』の成長が大幅に進行する。
5日前より二倍以上も膨れあがり、もはやそれが「蚊によるもの」では無いことは明確であった。
大豆サイズの『デキモノ』はこの時スーパーボールくらいのサイズになっていた。
これにはさすがの僕もヤバいと思った。
親に言って今すぐにでも病院に行こう…そうしたいのだが……

「できた場所が場所だしな…」

親にただ、なんかデキモノできたから病院連れてってなどと言っても「何言ってんの?ふざけてん?」と言われそうな気がした。
というか僕の親はそういう親だ。
じゃあなんだ?その『デキモノ』を見せようか?
『デキモノ』は局部近くのヘソ下にある。
思春期真っ只中の僕には恥ずかしくてできるはずがなかった。


今思えば僕はまんまとこの魂胆に引っ掛かったのだ。

当時15歳 高1
思春期
『デキモノ』のできた場所

この条件全てが上手く僕を罠にはめたのであった。

一つの『デキモノ』……
それから始まる僕の高校生活を当時書いてた日記を元にお話ししよう…