～１１月～


正確に狂いなく時は刻まれ、見事にタイムオーバー。


ゲームセット。


「はあぁぁぁっ…」


あたしの待ってる間の不安や孤独が一気に放出された瞬間。


込み上げる物が塊になり放出される。


「嘘つき！！」


あんなに抱き締め続けた手に持つ携帯を壁に勢いよく打ち付け、膝が砕け崩れ落ちた。


時計の針が１２時を差したと同時に溢れ出た涙。


化粧っけのない頬に遠慮なく透明な涙が流れ落ちた。


ちゃんと気持ち伝えるまで泣かないって決めてたのに。


泣きたくない…


悠希の約束が果たされなかったこの日。


あたしは１ヶ月こらえ続けた封印を解き放ち初めて泣いた。


自分の空回りで虚しさと怒りが膨張し、許容範囲を越え溢れ出る。


「泣かずに待ってたのに！」


携帯を拾い両手で強く握り、携帯を真っ二つに折ろうとした。


きしむ携帯のプラスチック染みた音。


「嘘なんか大っ嫌い！大っ嫌い！」


手の震えが振動を増して止まらない。


携帯を折りたいのに折れない…


「悔しい悔し」叫ぶ魂がとめどなく涙を連れてきて嫌でも頬をつたう。


必ず電話をくれると信じてのに。


約束は嘘に姿を変えた。


できない約束ならしないで欲しかった。


始めからなかった方がまだマシだ。


「もうかけねぇ」


そう言ってくれれば…


なんて今更嘆いても仕方ないし、あたしは悠希を恨む権利はない。


散々傷つけ、つらい思いをさせたんだ。


悠希の優しさに浸かって心地よくなってたんだ。


なんの根拠もないのに自意識過剰で自分の元を離れていかないと思っていた。


～悠希は隣にいる～


それが当たり前なんだと思ってた。


折れない携帯を握り、目を瞑り「最大の愛情をありがとう。家族の暖かさを教えてくれてありがとう。悠希。バイバイ…」


呟きながらあたしは悠希との思い出の詰まったメールを一件ずつ読み返し、ゆっくり消していった。