とにかく出来る限り今を生き抜かなければ悠希を待ってられない。


昔みたく一人で泣いて、その場にうずくまっていられない。


笑顔なんて生まれないし気持ちも晴れない。

が、悠希に認めて貰いたくて自分なりに精一杯仕事に打ち込んだ。


仕事の休憩が入れば携帯を見るのが日課になり、メール履歴があれば「悠希!?」


ドキドキし、狂ってメールを開く。


「なんだよ」


いらない友達の遊ぼうメール。


肩を落としては片手で携帯を閉じ、深いため息をつく。


端から見れば携帯依存症。


それくらいあたしは肌身離さず持ち歩き、携帯を睨んでいた。


仕事が終わればそれこそ携帯は離せない。


いつ着信が来てもいい態勢を整え、鳴らない携帯を抱き締め続ける。


そんな毎日を過ごしていた。


近所に住むたった一人の親友の望(のぞみ)は連絡もよこさないあたしをさすがに心配して、時々様子を見にきてくれた。


望に悠希と別れた経緯を話すと真剣な顔で話を聞いてくれ、こう口にした。


「お前いままで男変えまくってたじゃん。いっつも男途切れねぇし。けど歩見てわかったよ。悠希君に本気なんだな…」


「うん。あたしもよくわかんないけど好きで好きで仕方ないんだ。悠希越える奴なんて…」


手を振りかざし、望は泣きかけてるあたしの肩を思い切り叩きつける。


「お前まだ諦めんな!」


「いってえぇ~へへっ。ありがとう。効くわぁ」


「貫け!逃げんな!」


「あんないい男逃がしたくねぇわ!」


望にカツを入れて貰い猫背だった背筋がピンと伸びた。


しかし携帯が鳴るどころか時間は過ぎ行き、無情にも10月末をむかえていた。