焼くつもりなどなかった体はいつの間にか真っ赤になっていた。


日焼け止めを塗るのさえ忘れてしまう楽しさ。


潮風の匂いを全身に浴び、髪をごわつかせ夢中になって何度も海に入る。


悠希の白い肌も真っ赤になり、海の名残を体に残す。


海を満喫しきった午後。


「そろそろ帰るか!」


「うん!」


悠希に連れられ小高い場所にあるシャワー室に向かい体を洗おうとした時、バッグの中を見て気付いた。


「あっ!シャンプー忘れた」


行く前チェックし「これはさすがにはずせない」と準備していたはずがシャンプーをバッグに入れ忘れていた。


「だと思って…じゃ~ん。はいこれ」


さすが悠希。


手渡されたシャンプーはシーブリーズのスーッとする夏の香り。


「気が利くなぁ」


「俺を誰だと思ってんだ?」


「悠希」


真顔で答えたら、悠希は「おいおい」と言わんばかりの顔をする。


「そいつは間違いないが違うだろ!様をつけろ。様を」


シャンプーを取り上げようとする悠希の手をあたしは払いのける。


「嫌です」


「様つけりゃいいだけじゃん」


「無理です」


「まったくお前は。ははっ。ほれ浴びてこい」


笑ってシャンプーを持ち、肌に張り付いた水着を脱いでシャワーを浴びる。


砂まみれの体にシャンプーの泡が全身を覆う。


スーッとする夏の匂い。


香りに閉ざされた空間で匂いに包まれ、鼻をひくつかせ幸せを嗅ぎながら髪を洗った。