「あっ」


「ん?」


我にかえったあたしはなぜか急に恥ずかしくなってきて、わざと場の雰囲気をぶち壊す話題を悠希にふった。


「素敵な言葉を知ってる悠希くんに質問です。海に浮いてるあの緑の物体はなんですか?」


寝ていた体を起こし、海に浮かぶ緑色の気色悪い物体を指さす。


「あぁ、あれは昆布かワカメだな」


「本当かよ?」


「じつは知らねぇ。はははっ」


「んじゃ食え!」


「はっ?何を食えって!!」


困り顔の悠希を無視し、あたしは海に向かって走りだす。


そして緑の物体を大量に手に持ち、砂浜に戻ると悠希の前に立ちはだかる。


「歩!?何!?」


「うおらっ!」


気色悪そうにしかめっ面した悠希目掛け、おもいっきり投げつけた。


「なぁにすんだ!お前は馬鹿か!あはははっ」


「はははっ!お前もな!」


悠希は腹の上に乗っかった物体を手に取り、あたしにぶつけかえす。


「やめ、きゃあああ!!」


「ワッカンメ♪ワッカンメ♪」


「昆布だよ」


「と見せかけて」


「うおりゃ!」


「だからやめぇえい!」


二人でふざけてぶつけ合いをし、砂浜を走ってキャアキャアわめき声をあげる。


海も悪くない。


夏も


空も


何もかも悪くない。