後日。


あたしは父と話した内容を携帯越しに悠希に伝えた。


「どうだった?父親はなんて?」


心配げな悠希の声で始まる会話。


耳に入る声がやけにか細く、若干聞き取りにくい。


そのせいか自分の声が甲高くなった。


「歩、店やらないってちゃんと言ったよ!そしたらわかってくれたの!嘘じゃないよ!」


晴れやかな気持ちで悠希に胸をはって話すあたし。


「悠希に伝われ」と願うが故、悠希とは逆に声を張り上げる。


「わかってくれた?マジで!?」


「うん!マジで!」


「ちゃんと話してよかったな!なんか俺が嬉しい~」


悠希の心配は瞬時に弾け飛び、自分ごとみたく喜んでくれている。


さっきのか細い声はなんだったのと言わんばかりに。


「会話はちょっとだったよ。だけどあたしなりに強く言ったんだ。そしたらさ、なんかあっさり店やらなくていいって言われて…嘘みたいでさ」


「はははっ。お前声に張りがあるぞ~」


からかう悠希にちょっとムッときても、それすら心地いい。


――だっていいじゃん。真っ黒だった気持ちに小さな芽が咲いた気がしたんだもん


「うるさいなぁ~」


「うるさいってか!ま、いいか。はははっ」


いつもの調子で笑いに変わる。


こういう調子で悠希は空気を和やかにしてくれる。