それから数時間。


寝転がり天井を見上げ自問自答を繰り返していたら、いつの間にか周りはまっ暗な夜を迎えていた。


――どうしよう。悠希との約束果たしてないし。このままじゃ明日になっちゃう。なにがなんでも電話しなきゃ…


散々迷いに迷った。


怖かった。


が、弱い自分の気持ちを無理矢理払いのけ、負けてられっかと肝をすえ父の携帯に電話をかけた。


「はい」


「あっ、歩だけどさっきかけ直すって言ったからかけたんだけど」


「おぉ」


数時間前に話したばかりなのに、父の声を聞き動揺したあたしは他人と話すみたいに声がうわずる。


「ってかさ、大事な話しがあるんだ」


「大事な話?」


「待って。マジでお願い。何も言わずまず聞いて」


「ん?あぁっ。で、なんだ大事な話しって?」


心臓がこれでもかと激しく波打ち、吐き気が襲いくる。


気持ち悪い。


吐きたい。


あがってくる。


吐き気が強くなり喉元まで何かがあがりかけたが、あたしは負けじと息を大きく吸い込んだ。


それとほぼ同時。


勢いで口を走らせ、思いの丈をぶちまけた。


「おとんが言いたいのはとにかく店やれってでしょ!?でも店は何が何でもやれない!金儲けなんかしたくない!やっと抜け出せたの。あたしの体大切にしたいの!!」


今まで言えなかった気持ち。


初めて憎き父に強く伝えた瞬間だった。


悠希との約束を守る為。



弱い自分との決別の為に…


きっと怒鳴られる。


また甘えるなと言われてしまう。


そう思い、目に力を入れきつく閉じた。


「いや。別にそこまでしろしろ言ったつもりはねぇぞ!ただもったいねぇと思ったんだ」


「絶対無理!なんて言われようが夜は出来ない!」


どうしてもここで負けるわけにはいかず、ごり押しして自分の口から意志を懸命に伝えぬく。


負けられない。


折れられない。


「嫌ならしゃあねぇべ」


「えっ?」


「だから嫌ならしゃあねえだろ」


「ん、あっ」


「だからしゃたねぇだろ!」


「うっ、あっ。だからごめん…」


あんなにしつこくかけてきた父が起こした、あまりにもあっさりな了承。


びっくりして言葉につまる。


夢を見てるようで、信じられず左手で太ももをきつくつねる。