「明日香?見栄はってどうするん」

黙りこんでテーブルを見つめる明日香。
怒られるとき木目を数える癖は相変わらずみたいだ。

「……」

「俺はそのままの明日香が好きよ?明日香は違うん?」

「…え?」

顔をあげる明日香。

「明日香は飾った俺が好き?」

ちょっと考えてから、明日香は口を開いた。


「全部好き。」



全部好き。
全部、全部!?

「あ…ありがと……」

え、照れる。
何だよ、そんなの今まで言ったことなかったじゃん。


――って。

「と、とにかく!
標準語に合わせようとしなくていいから!
言葉だけじゃなくてイントネーションまで合わせようとすると、さっきみたいに大変になるだろ!
お前が嫌なら俺も方言で喋るから!」



「うんっ!」

明日香はその日一番の笑顔を見せた。