「きいちゃん、人見知り激しいのに珍しい」


「もともと知り合いなんだよ」


きいちゃん?


笑い出したいような希皿の反応が怖いような。


我慢できない笑いがこみ上げてくる。


礼太は肩をふるわせて、懸命に笑いを堪えた。


冷ややかな視線を心なしか感じる。


礼太が笑いを堪えていることに気づいているのかいないのか、色白の少年は迷いのない仕草で礼太の手をギュッと握った。


「俺、天原 忍。よろしくね、礼太くん」


屈託なく微笑みかけられ、礼太はドギマギしながらうなづいた。


「よろしく」


忍はどこか、弟の聖に雰囲気が似ていた。


やわらかくて明るい、無邪気な瞳。


聖ほど圧倒的に天使めいた美しい容貌をしているわけではないが、外見もどことなく似ている。


そのことに気づいたせいか、礼太にしては珍しく、早くも警戒が薄くなる。


「礼太くんじゃ堅苦しいかな、れいちゃんって呼んで良い?」


ちゃん付けの呼び方を回避するのにかなりの労力を使うはめになった。


「慈薇鬼くん、わたしにも紹介してよ」


ふと、可愛らしい声が耳をくすぐる。


声がした方向を見ると、背の小さな女の子と、緑の眼鏡をかけた男の子が興味深げに礼太を見つめていた。