「あのね、今年は一年が一人も入らなくてね、大変なの。もともと部員は五人だったんだけどね、一人辞めちゃったから、本当、危ういの。礼太くんが私たちのクラスに転入してきたのは、神の思し召しだと思うわ」


蔵峰リリィは大仰に言い募ると、首を傾けた。


「入部、してくれないかなあ」


かわいい。


それが礼太の純粋な想いだった。


蔵峰リリィは、かわいい。


あやうくうなづきかけたところで、まて、と理性が声を上げた。


礼太が転入してきたのは神の思し召しではなく、華女の思し召しである。


叔母のにっこりが目の前でちらつく。


オカルト現象求めて、はるばる遠方まで赴くとかおっしゃてたがつまりは結構やばいとこに行くこともあるんじゃなかろうか。


(こんなの入ったら、めちゃめちゃ怒られるんじゃないか)


父さんとか廉姫とか華女さんとか華女さんとかに。


「あ、あの」


「うん」


蔵峰リリィの瞳が期待に輝く。


「ちょ、ちょっと待っていただけないでしょうか……」


きょとん、とした顔が、ついでほころんだ。


「もちろん」