とりあえず、控えめににこっと笑ってみた。


「別に、謝らなくても大丈夫だよ。ちゃんと聞かなかった僕も悪いんだし」


オカルト研究部どころか、部活の勧誘であることすら聞いていなかったわけだが。


「じゃ、入ってくれるの」


目をキラキラさせる忍に、いや、そうじゃなくてね、とぶんぶん手を振ると、しょぼん、と音がしそうな勢いで落ち込まれ、何やら悪いことをしたような気分になる。


「忍は気が早いなあ。オカルト研究部のことを知ってもらってからでしょう、そういうこと聞くのは」


これこれ、とラジがたしなめると、はい、と良いお返事が返ってきたので、礼太は、あはは、と笑いそうになってしまった。


まるで、ラジは忍のお父さんのようだ。


「ではでは礼太くん。我らがオカルト研究部にようこそ、と言いたいところですがその前に、軽くレクチャーしておきましょう」


回復の早い忍はニコニコ笑いながら言った。


「本校のオカルト研究部は、学校と同様に、大変長い歴史を持っています。しかし、その名称や活動内容を理解してもらうのは並大抵のことではありません。そのため、表向きは家庭科部として知られており、職員室の部活名簿にもオカルト研究部の名は記されておりません。しかし、知る者が少ないから無いのではない。たとえ、知る者が少なくとも、オカルト研究部は、朝川中学の正史に埋もれた、裏の歴史に刻み続けられた不朽の存在なのです」


よくもこんなに言葉がすらすら出てくるものだと、礼太は素直に感心した。


「さて、肝心な活動内容ですが、オカルト研究部、を自負するからには日々、オカルト現象の研究に奮闘すること欠かせません。そしてそのためには、日常の中の怪奇に常に耳を傾け、目を凝らし、嗅覚を尖らせ、記録を欠かさず、後世のための資料作りをしなければなりません。また、土日には近場の探索、長期の休みともなれば遠方に赴き、世のオカルト現象を求めて、活発に活動しております。………………………どうよ?」


「……なんか、凄そうだね」


それが正直な感想だった。


忍は勝った!と言わんばかりに、礼太に大きくVサインした。


蔵峰リリィは忍ほど単純ではないらしく、まだ不安げに礼太を見つめている。


ラジはずっと仏のように微笑んでいて、よくわからない。