なんか、悔しい……。


わたしだけが、ドキドキさせられてる。



「結局、寝てないし……。」



本当、何しに来たの?


三木くん……。



まだ温かい、隣の席。


いたのはほんの数分だけ、なのに。


そこには三木くんの甘い香りが染み付いていて

隣にいるわたしを、クラクラとさせた。



「あれー? こがちゃん、お昼食べてないじゃーん。」



さっき話し掛けてくれた前の席の子が、残る……というより、

一度も手がつけられてないお弁当を見て、そう言う。



確か……星川さん、だったかな?



「食べないのー?」


「うん。もう下車だし、あんまりお腹空いてないから。」


「そっかー。こがちゃん、ただでさえ細いのに、あんまり無理しちゃダメだよ?」



え、無理って?


それを聞く前に、星川さんは前に向き直ってしまった。



……まぁいっか。



手の中にある、いちごの飴玉。


初めて三木くんから貰った、形あるもの。



嬉しさで、心臓がいつもより早いことに、わたしは気が付いていた。