「ね?」
椅子に腰を下ろしたわたしに、三木くんはこれでもかというぐらいくっついてくる。
その時、ふわんと香ってくる三木くんの香り。
三木くんからはいつも、甘い香りがする。
酔ってしまいそうな、魅了されてしまいそうな……。
「せんせーの隣って、誰もいなかったっけ?」
この香りは、嫌いじゃない。
「岡辺先生だよ。酔っちゃったみたいで、ずっと前からトイレに行ったきり。」
智樹は車酔いをする。
車だけじゃなくて、バスも電車も新幹線も。
場所によっては、エレベーターとかエスカレーターもダメならしい。
「ふうん……。でも、よかった。」
「え?」
「だってあの人がいないから、今こうしてせんせーの隣に座れてるんだし。」