佐野くんとは、物心ついたときからもうずっといた。

幼稚園も保育園も小学校も中学校も一緒で、いつも一緒に登下校していた。

家が隣通しっていうのもあったけど、何より私が佐野くんのことを好きだからっていうのが一番かもしれない。

佐野くんは昔からモテた。

毎年目に見る、腕に余るほどのバレンタインデーのチョコレート。

そのなかに私のチョコレートもあった。


佐野くんはそのたびに、私に向かって「一緒に食おーぜ」なんて言う。

ほかの女の子に貰ったチョコレートを。

こっちがどんな気持ちでそのチョコレートを口に運んでいたかは、佐野くんは決してわかんないと思う。たぶん、一生。


仲良しだった私達を引き裂いたのは、中学三年の冬だった。


いつものように、佐野くんと帰る時間。

私は佐野くんが「委員会あるから待ってて。」って言うから、昇降口でマフラーに顔を埋めながら待っていたときだった。


昇降口につながる廊下に、聞き覚えのある声が聞こえた。


「幸人、お前大変だよな、委員長だなんて。」

「誰の所偽だよ?」

「俺の所偽。」


・・・幸ちゃんだっ