六花は屋上には雨に濡れるために来ていた。


ならばと思い、六花は彼女にたずねる。


「……なら、お前も悩み事があってここにきたのか?


どうして雨に濡れたいと思ったんだ?」



このとき六花は期待していた。


彼女が自分と似た人物ではないかと。



しかし、



「いいや、私は楽しんでいるんだよ」



「は?」



彼女の言葉は六花の考えていたものとは全く違っていた。



「見て分からないかい?」



「どこを、どう見て、何を分かれと?」



「私は雨に濡れることを楽しんでいるのさ」


「意味が分からない…」

「おもしろき こともなき世を おもしろく」


彼女は俳句を詠む歌人のごとく流れるように詠った。


「何だそれ」


その言葉を知らなかった六花は疑問符を浮かべる。


「知らないかい?
高杉晋作が残した言葉さ」