六月、梅雨に入ってからほとんど太陽を拝むことが少なくなってきた。
ぎぎっという音を響かせて屋上のドアが開く。
ドアを開けたのは已己巳己六花(いこみき りっか)という少年だった。
当然、ここには授業をサボって来ている。
外は雨が降っていて、いまだに止む気配はない。
六花は雨が降っているのは承知の上でここに来ているのだが、そんな雨の中、屋上に先客がいることは予想外だった。
六花が今いる場所から十メートル程離れた所にその先客はいた。
一人の女子生徒が六花に背を向け、雨に濡れることをいとわず、手すりにもたれて景色を見ていた。
彼女の上履きの色を見る。
六花の通うこの高校は学年によって上履きに入っているラインの色が違う。
色は一年生が赤、二年生が青、三年生が緑となっている。
彼女の上履きのラインは青で、六花と同じ二年生だと分かった。
彼女は黒い艶のある髪をしていて、濡れて張りついたセーラー服からはスタイルがいいことが見受けられた。