「あぁ、んなことやったな。
俺も女役やらされたっけな、身長の所為で……」
何か思い出したらしく、声のトーンが低くなる。
嫌な思い出でも掘り起こしたのだろう。
「男受けよさそうだもんな、兄貴は」
「野郎にモテてどうすんだ気持ち悪ぃ」
「まぁ、兄貴の貞操が奪われようと私は知らんがな」
「ちったぁ心配してくれよ!
んで、そこの二年。俺の妹に何かしてないだろうな」
「してませんよ」
六花はしれっと返す。
月の鋭い眼光には大分馴れてきた。
「フンッ、ならいい。んじゃ俺行くわ」
「二度と来んな」
「また来てやるよ!」
そう言って月は階段を下りて行った。
「六花、塩撒いとけ、塩」
「持ってねーよ」
そんな軽口を叩きながら二人の時間は過ぎていくのだった。