ハルのすぐ傍まで来ると、ハルは俯いて、そして口を開いた。




『俺さ、冬香に別れよ、って言われた』




ハルが俯いていて、どんな顔をして言っているのかは分からない。



でも、何故かハルが傷ついてる顔をしてる気がして、私はそっとハルに近づく。






『当然だよな。
 冬香を利用してまでも、彼女以外の誰かを想ってるとか…ありえねぇーよな…』





『…うん、私も、そう思う』



私がハルの言葉に返すと、ハルは顔を上げた。






『なー、俺たちさ、もうこの関係をやめないか?』



あまりにも涼しい声でいうものだから、私の心がキューって切なくなる。





『夏美、言ったよな?
 この関係の結末は俺に委ねるって、だから、もう終わりにしよう』





『………ハル、私も、そう思ってた』




私の言葉にハルはフッて笑った。





『色々と悪かったな。
 冬香とも関係をダメにさせちゃってよ…
 ほんと、マジでごめん…』




『……ハル…?』




『うん…じゃ、ありがとな』



ハルはそう言って、私の横を通り抜けていく。





ハル……。


あなたの“ありがとう”は別れを意味してる、“ありがとう”なんだね…。








私は、あなたのその綺麗な“ありがとう”の言葉はいらない。



あなたを過ごした時間を、綺麗な思い出に変えたくないの。






だから、私は、あなたにこう言うね?