『もうさ、嘘なんてつかなくていいんだよ?』


そう言って、冬香は私に近づいて、ただ、ただ私の背中をさすってくれた。







『ね、夏美?
 私のこと、まだ親友、そう、思ってくれてる…?』


冬香の問いかけに、私は冬香の目を涙目で見つめた。





『もしYESなら、私とハルのために、今からハルに気持ちを伝えてきて。
 もしNOなら、私たち、絶交しよう?』




……冬香と絶交なんて、


冬香と絶交なんて、絶対に嫌だー…。




たくさん傷つけてしまったけど、それでも私は、冬香のことが大切だから。

許されるなら、冬香と一緒に、一緒にいたい…。






『夏美?』


冬香は私の顔を見つめ、答えを求めてくる。






『………冬香と一緒に………いたい……』



私が泣き崩れて、そう言うと、冬香は私のことをそっと抱きしめてくれた。






『…うん、私もだよ。
 良かった…夏美がそう言ってくれて…。
 私が夏美にしてしまったことを聞いたら、夏美は私を嫌うかもって……不安だった……だから、良かったよ………』




こんな風に言ってくれる親友に、


今から、私が返せることは、なんだろう…。




こんな私を許し、そして親友でいてくれる、この子に、

私はそう、返していけばいいと、いうのだろうか…





『………………夏美、私たちさ、
 いいところも、こんな醜いところも全部見せあったじゃない?
 
 だから、前よりももっと、親友になれると思う。

 だから……好きな人は失ったけど、私には大切な親友がいるから…。
 寂しくないよ?

 だから……今すぐハルのところに行っておいで!』



冬香はそう言って、抱きしめてくれていたその腕を開放し、私の顔を数秒見つめて、そして私の背中を押した。





ふいに、

“夏美の背中も、ハルの背中も押したいから”、冬香のその言葉が脳裏を過る。






『…………………嘘が下手でごめん…。
 でも、嘘を許してくれて、ありがと…』


冬香にこんなことしか言えない私は、きっと、冬香にしたら、最低な親友だ。




でも、冬香は、いつも笑ってくれる。





『うん、いってらっしゃい』



私は冬香のその言葉を聞いて、冬香に首を一回だけ振って、そのまま教室を飛び出していった。