『そんなに自分を責めるなら、もっと上手に嘘をついてよ?
私に気付かれないくらいのバレない嘘をついてよ、そしたら私、ハルの想いに向き合わず、強引にこのままハルと付き合ってたのにさ……』
冬香が笑って、そう、言うから。
私の目から、さっき以上に涙が溢れた。
『でも、夏美だって向き合おうとしてくれたんでしょ?』
冬香はそう言って、昨日の花柄のハンカチを取り出す。
確か、その中には、私が置いていったネックレスが入ってて…
『もし夏美が本当に罪悪感を感じていなかったら、こんなバレバレになるものを落としていかないでしょ?
本当は、このネックレス、部屋に忘れたんじゃなくて、私に気付いて欲しかったんじゃないの?
私もハルのことが好き、って…』
冬香はそっと広げたハンカチから、昨日も見た私のネックレスを取り出す。
私は、そのネックレスを見て、胸がズキンッてなった。
『………ちが……ただ単純に忘れて………』
『嘘、夏美、嘘つくの下手すぎる!
だって夏美、言ってたじゃない?
ネックレスとかつけると首の回りが痒くなるって。
金属アレルギー、って、前に言ってたじゃない?』
…前に私の誕生日の時に、冬香がネックレスをプレゼントしてくれるって話になった時、そいえば私が冬香に“金属アレルギー”って、そう言ったんだ。
冬香はそんなことさえも、覚えててくれてたんだね…
すごい小さなことでも覚えててくれてる冬香の、その優しさに胸が痛くなった。
どうして、この子に最初から、“私も好きなんだ”と言えなかったんだろう…
どうして、この子に、“告白されちゃって、私も好きみたい”と相談出来なかったんだろう…
裏切って、傷つけて、泣かせて、私はなんでこの子とちゃんと向き合わなかったんだろう…
そうしたら、きっと、こんなことにならなかったかもしれないのに。