『夏美さ、ハルのこと、好きなんでしょ?』




冬香の大粒の涙を見ながら、冬香にはちゃんと気持ちを伝えなきゃ、そう思った。







『…………うん』


私は首をユックリと縦に振り、そして冬香にそう答えた。


私の返事に冬香は唇を一度噛みしめ、それから優しく微笑んだ。





『教えてくれて、ありがとう』


冬香は、そう言った。




でも、私は冬香の言葉に、“ごめんね”さえ言えない。


“聞いてくれてありがとう”さえ、それすら言えない。





『ハルにも、その気持ちを伝えてあげて?』






親友が泣くのを必死で堪えて、自分の気持ちを押し殺して、そう、私の背中を押そうとしてくれているのに。



それでも、そんなことをしちゃいけない、そう強く思った。





だから、私は首を横に振った。






『…夏美?』


冬香は私の顔を眉をひそめて、そう声をかけてくる。







『……ダメだよ。
 だって、私…冬香の知らないところで、冬香を傷つける……そう分かってたのに、何度も何度もハルと会ってた…。

 冬香の想いを知ってたくせに、冬香が悩んでる時も、冬香がハルを純粋に想ってた時も、私は……ずっと、冬香を裏切ってたんだよ……?

 そんな私が…許してもらえる訳ない……ハルに本当の想いを伝えるなんて……そんなのあっちゃダメなんだよ…………』





そう。



私が冬香もハルも傷つけた。


そんな私が、冬香を差し置いて、ハルと幸せになるなんていけない。



そんなのあっちゃダメだ…。





『バカね、夏美は』


でも、冬香は笑って、そう言ったんだー…。