ハルの後に続いて、階段を下りていく。


この広い家、でも今日は、というよりも今は、玄関までの道のりが短く感じる。



すぐに着いてしまったと勘違いしてしまいそうな感覚を振り払い、ドア一枚を隔てたところにいる冬香と目が合ったときのことを思い浮かべる。




きっと、冬香は泣くだろう…

きっと、冬香は私をもう二度と親友とは言ってくれなくなるだろう…



そんなことが頭の中をぐるんぐるんして、私は段々と緊張が増していく。




……の、反対に、ハルは玄関のドアを簡単に開けてしまった。





玄関のドアの向こうには、案の定、冬香が立っていて。


ハルを確認し、その奥にいる私の存在も目に入ったのだろう、すごい驚いた顔をしている。





想像はしていた。

こうなることは予め予測していた。




でも、実際の場面では想像や予測を超えた、冬香の悲しみに溢れた表情を見て、私の胸がズキズキと痛み始める。







『…………な…んで……夏美がいるの…?』



その切れきれの言葉の裏には、どんな感情があるのだろう。






『……ハル、なんで、ハルの家に夏美がいるの……?』





私は唇をキュッて結んだ。



そしてハルは冬香の問いかけに、



『中で話そう?』


それだけ言って、冬香のその細い腕を引いた。



腕を引かれ、冬香は玄関の中に入ると、ハルは玄関のドアを閉める。






『……夏美…。
 どうして……夏美がハルの家にいるの………?』




それは、もう震えた声だった。




でも、私は口を開くことが出来ない。




だって、冬香に、“裏でハルと付き合ってたのは私”、そんな告白を急には出来ないから。








『冬香、ごめんな。
 …ビックリしたよな?
 でも、冬香と最近上手くいってないのを心配して訪ねてきてくれただけだから』



ハルは何事もなかったように、そう、優しく冬香に説明をする。





ハルはいつも、こんな風に、何事もなかったようにするのが上手、だよね…。