──え? 『アタシも』って……。

目をしばたたかせていると、ジャスミンさんは意味深な笑みを浮かべて、一度奥に姿を消す。

そして、ティーポットを手に戻ってくると、カウンターの奥にある戸棚から涼しげなガラスのコップを取り出し、そこへお茶を注いだ。


「どうぞ。少しゆっくりしていって。開店の準備はまだいいし」

「ありがとうございます……!」


差し出されたそれに鼻を近付けると、ほのかにすっきりとした香りがして、ジャスミンティーだとすぐにわかった。

彼女も自分のコップにそれを注ぎ一口飲むと、微笑みながらもう一度言う。


「アタシも、彼のことはほとんど知らないわ」

「そう、なんですか……」


拍子抜けしつつ、私もコップを口に運ぶ。

昨日の仲良さそうな雰囲気なら、ジャスミンさんは彼のことをいろいろと知っていそうだと思ったのに。

そんな私の気持ちを読み取ったらしい彼女は、「お役に立てなくてゴメンなさいね」と眉を下げた。


「でも、だからいろいろと詮索してるのよ。まぁ、その大部分は女関係だけどね」


不敵な笑みを浮かべて得意げに言う彼女に、私もつられて笑ってしまう。