目と口をぱかっと開く私に、ジャスミンさんは思い起こすように目線を斜め上に上げて言う。


「あなたが寝ちゃったからタクシー呼んでくれって言われて、着いたら彼が抱っこして出ていったのよ。だからきっと、あのままさらに鳴かされちゃったんじゃないかなー……って、ちょっともうホント妬けてくるわぁ!」

「いや、あの、決してそんなことにはなってませんので」


笑って話していた彼女が急にむくれだすから、私は若干身体を後ろに反らし、手を振って否定した。


でも……お姫様抱っこなんてされてたの!?

そんな経験はもちろん一度もない。重かっただろうな……うぅ、恥ずかしすぎる。

今さらながら顔を熱くしていると、ジャスミンさんが私の顔を覗き込み、探るような目で見てくる。


「あなた達、本当に恋人同士じゃないの?」

「違いますよ! だって私が彼のことで知ってるのは、名前と年齢だけですから」


向こうは私の恋愛歴まで知っているというのに。

……まぁ、勝手にペラペラ喋ってしまったのは自分なのだけど。

自嘲気味に笑いを漏らす私に、ジャスミンさんは意外な一言を口にする。


「そうなのね……。実はアタシもなの」