バッと振り向くと、白いパーカーにジーンズ姿で、両手にスーパーの袋を提げたジャスミンさんが、階段を下りてくるところだった。

見た目は、ちょっと怖い元ヤン風の男性という感じだけど、肘が内側に曲がっているあたりが妙に女性っぽい。

笑いと、会えたことの喜びが同時に込み上げる私を見て、ジャスミンさんは目を丸くする。


「あらっ!? 昨日のカワイコちゃんじゃない!」

「こ、こんにちは……!」


頭を下げて挨拶すると、ジャスミンさんは表情を明るくして、軽やかに階段を下りてくる。


「もしかして、ハンカチを取りに来たの?」

「あ、そうなんです! やっぱり落ちてましたか」

「そりゃあ、あれだけぐにゃぐにゃに酔えば落としたことにも気付かないわよね」


クスクスと思い出し笑いをする彼女は、やっぱり昨日の一部始終を見ていたのだとわかって、私は恥ずかしさで縮こまった。


「よかったわ、来てくれて。あなたの連絡先もわからなかったから」


にこやかに言いながら私の隣に来たジャスミンさんは、ポケットから取り出した鍵を差し込む。


「ま、知ってても連絡出来なかっただろうけどね~。夏輝ちゃんとのラブラブタイムを邪魔しちゃ悪いと思って♪」

「……はい?」