私は質問に答えることはせず、二人の目の前に柏屋の袋をガサッと掲げる。


「申し訳ないんですけど、とりあえずこれで勘弁してください」


こうなることを予想していた私は、二人の詮索をかわすために、朝電話して取り置きしてもらってまでこれを買ってきたのだ。

柏屋の秋限定、しかも一日五十個限定の“栗あん団子”を。


キョトンとした二人は、白いビニール袋の中をちらりと覗いた。

栗あん団子を確認し、一瞬固まった阿部さんが、小さなため息を吐いて呆れたように私を見る。


「……あのねぇ、美玲ちゃん? いくら私達が柏さんびいきでも、これだけで引き下がるわけ──」

「わかったわ美玲ちゃん! 話したくなった時に話してちょうだい」


あっさり引き下がる小柄な浜名さんを見下ろし、阿部さんは眉根を寄せる。


「ちょっと浜名さん? あれだけ掘り下げるって言ってたのに、なに聞き分けいいフリしてるの!」

「だってこのお団子、なかなかありつけないって有名じゃない! 私が柏屋に寄る時も、いつも売り切れだったし。ありがとう美玲ちゃん。これは遠慮なくいただくわ♪」


ニコニコ顔で袋を受け取る浜名さんに、阿部さんは「結局花より団子か……」と言ってうなだれた。