戸惑う私を見て、彼はつらつらと話す。急に経済の話を出されて、私は目をしばたたかせた。

でも彼の言っていることは理解出来る。そんな具体的な数値は初めて知ったけれど。


「そ、そうなんですか?」

「一概にそうとは言えないけどね。でも彼らの目を引くためにも、半額くらいにした方が効果はあると思うよ。まぁ、値下げはしないに越したことはないんだが。
それに、このワゴンは外観に合わないな。万引きされても目につきにくいし、中へ入れた方がいい」


商品をワゴンの中に戻しながら淡々と話す彼。

な、何この人……何でいきなりそんなことを? たしかに、言っていることは間違っていない気はするけど……。


「じゃあ、仕事頑張って」


わずかに眉をひそめて考えていると、男性はそれだけ言い残してあっさりと離れていく。

はっとした私は思わず引き留めた。


「え!? 何かご用があったんじゃ……」

「たまたま近くを通り掛かったから、君の姿をお目にかかりたくて寄っただけ」


甘い微笑みとともにそんな言葉を投げ掛けられて、ほんの少しドキッとすると同時に、疑惑が生まれる。

私を見たかったなんて、本当なのかな?

突然さっきみたいな値下げ額のことを話してくるのも違和感があるし……この人はいったい何者?


「あの、失礼ですけど、あなたは何をしてらっしゃる方なんですか?」