頭を上げると、男性はきりっとした瞳を柔らかに細めてこう言った。


「君、来週のお祭りの日が誕生日なんだね」

「あ、聞かれてましたか……」


なんだかちょっと恥ずかしいような、気まずいような。

でも、何で私の誕生日なんかがいい情報なんだろう。この人が知っても、何の得にもならないだろうに。

そんな小さな疑問が浮かんだけれど、たいして気にもせずすぐに消えていく。


「ここのお買い得品を見てたら聞こえてきたからつい、ね」


そう言って、彼はワゴンの中からお菓子用のラッピング袋を一つ取り上げた。

それに貼られた値下げシールを確認して、ぼそっと漏らす。


「……ニ十パーセントOFFか。中途半端だな」


……え?

これまでとは違う、少し冷たさを感じる呟きが聞こえて、私は商品から男性の顔へと目を移した。

彼も目線だけを私に向け、薄い笑みを浮かべて言う。


「ここの商品、あまり売れてないんじゃない?」


い、いきなり失礼なことをズバッと……!

でも、たしかにその通りだ。何でわかるの?


「もっと思い切った値引きをした方がきっと売れる。今は約七十パーセントの値引きをしないと、消費者はお金を使う傾向にないとまで言われているから」