「なに、突然」

「前から思ってたんだよ。僕って、男として見られてないよなーって」


陽介にふて腐れたように言われ、私にとって彼がどんな存在なのか、ぴったり合うものを頭の中で探してみる。


「そうねぇ……熱帯魚みたいな存在かな。見てると癒されるし」

「男とかいう以前に人として見られてねー!」


ガーン、という効果音がしそうな感じで天を仰ぐ彼がおかしくて、私は大笑いした。

けれど、彼はいたって真面目な顔になる。そして、少しだけ黙り込んで何かを考えた後、私を見据えてこう言った。


「みーちゃん。来週のお祭り、一緒に行こ」


あ……由香以外にもいたわ、お祭りに行く相手が。

なんとなく、陽介には私なんかより他に行く相手がいるんじゃないかと思って、今まで誘うのは遠慮していたのだけど。


「誕生日だし、好きなものなんでもおごってあげるから」

「あ、うん、ありがと……!」


私も餌付けされてるわけじゃないけど、と心の中で言いながらも、素直に了承する。

でも、なぜか陽介は仏頂面をしたままで。


「もう熱帯魚とは言わせないからね」


不機嫌な声でそんな謎の宣言をすると、いつもの笑顔を見せないまま、再びスクーターのエンジンを掛けた。