「お泊り初めてじゃないの?」

『そうなんだよ~! どうしよう、ドキドキだよー』

「かわいこぶっちゃって。ヤることヤるくせに」

『もう美玲、発言が可愛くないっ!』


いつかの陽介と似たようなことを言って、ぷんぷんと怒る由香だけど、『まぁたぶんその通りなんだけど』という呟きが聞こえてきて、私は声を上げて笑った。


「そっかぁ。お祭りは残念だけど、マコちゃんとのデート楽しんできて」

『ほんとゴメンね。でも美玲が誕生日だってことはバッチリ覚えてるし、お土産買ってくるから!』

「ついでにノロケ話も、でしょ」


うっふふふ、と可愛い声で気持ち悪い笑い方をする由香に、また笑いながら電話を切った。


私と違って、由香は万年恋をしているような子で、そのせいもあってか、いつも幸せそうな空気を振りまいている。

とっても天然だけど、素直で自分を偽らないし、明るくてのほほんとした性格の由香が、私は大好きだ。

その由香がダメならお祭りは諦めるか。別にどうしても行きたいわけじゃないし。


結論が出たところで、ソファーから立ち上がる。

そして小さな手作りのお弁当をロッカーにしまうと、事務所から店内へ戻った。