誕生日を一週間後に控えた土曜日、一人で休憩中の私は、事務所のソファーに座って親友の由香(ユカ)と電話していた。

陽介と同じく、中学で仲良くなった由香は、今でも頻繁に連絡を取り合っている数少ない友達の一人。

銀行で働いている彼女は、今日が休みなのだ。


『どうしたの? 美玲が仕事中に電話してくるなんて珍しいね』

「さっき思い出してさ、来週のお祭りのこと」


誘おうと思ったのに忘れていて、さっきお店に来たケーキ屋の奥さんを見て、誕生日とお祭りのことを思い出したのだった。


「由香、もし暇なら久々にお祭り行かない?」

『あーんもぉ美玲! もうちょっと早く言ってくれればよかったのに~』

「え?」


少々アニメ声チックな、見た目もとっても女の子らしい由香が、電話口で悶えているのが目に浮かぶ。

けど、いったい何で?


『来週、マコちゃんと旅行行くことにしちゃったんだよー。しかもつい昨日』

「そうなの!?」


マコちゃん、もとい誠(マコト)くんは、付き合ってまだ三ヶ月くらいの由香の彼氏だ。

同じく銀行員である彼は、写メで見ただけだけれど、由香が好きそうなスポーツマンタイプの爽やかイケメン。

その彼と旅行か……一歩遅かった。ていうか。