「あぁ、今日も王子かっこよかったー。
もうスーツが似合いすぎて、ごちそうさまって感じ」
「…へぇ。今日はスーツだったんだね、王子。
……って、どうでもいいわ、あんたの目の保養の王子なんて」
私の話に同僚の小彩(さあや)は、新しくしたネイルを触りながらため息をつく。
私と小彩の朝の会話は、私の後ろに並ぶ王子の話で始まる。
そして私の朝は、あの王子をみることで始まる。
王子様のように優しい瞳をしていて、風が靡く度にフワリと揺れる栗色の髪。
その人を見るだけで、朝眠くて不機嫌な私を一瞬にして癒してしまう魔法使いのよう。
「一年近くも毎日王子の話してるけどさ、ぶっちゃけ王子のこと好きなの?」
…好き?私が王子を?
「好きとかそういうのはない。
私の王子は…なんていうか目の保養?」
おそらくあの王子は見た感じだと私よりも若い。
それはつまり、年下ということ。
「私、年下とか論外だし」