……やっと、声が出た。


絞るように出した声は、平静を装っていてもどこか嬉々としているように思える。



「……まず、わたしの質問に答えてくれませんか?」


「うん、それで、なにしてるの?」



あっさりと流すおれに、彼女は一瞬不機嫌そうにしたけれど、顎に人差し指をついてすぐになにかを考えるような仕種を見せた



「……つまらないから、ここで景色を眺めてたの」


「楽しいの、それ?」


「まあまあかな。落ちるかもって思うとちょっと怖いけど」



たぶん、彼女はおれと同じ種類の人間だ。


直感的に、そう思った。



きっと、今まで、楽しいと思ったこともわくわくしたこともない人間だろう。