涙目でこちらを恨みがましく睨みつけてくる川端さんから顔を逸らして、一人眉を顰める。
「……なんか」
「……うん」
「ムカつく。早川のこと見てると」
「……あーちんってそんなにイズミールのこと嫌いだったっけ!?」
イズミールが可哀そうだよ、と同情した声を作る彼女だけれど、正直あんたに可哀そうって言われることの方が可哀そうだとか思ってしまう。
あと今更ではあるけれど、そのダサいあだ名どうにかならないの。もう手遅れか。
「もー、見てるだけでムカつくって、そんなのひどすぎだよお」
「……だって、」
「うん?」
「人の貴重な休日潰した上に、勝手に手まで握ってきてアホなことばっか言って私のこと脅してきたくせに、飽きたら放置って! なんなわけ!? ……って、思わない!?」
「……へ?」
「ううん、いや。別にそれはいいけど。放っておいてくれるのはいい。でも散々人のこと惑わせておいてだよ、……急にそういうのはなんか、……ズルイ」
……ああ確かに。
思ってることがーって吐き出すと、ちょっとは落ち着いたかもしれない。
私はこんな風に思ってたのかと、複雑な自分の苛立ちを自覚することもできた。
肝心なその理由こそ、未だ分からないものの。
キョトンとした顔をして私を見ていた川端さんは、数秒の間を開けた後に、突然ゆるやかに口角を上げてだらしない笑みを作った。