内心の動揺を悟られないように平静を装うけれど、バカ……鈍感な川端さんは気付くことなく、いじけたまま自身のお弁当を頬張った。
「……まあ、それはいいけど~、……もしかしてそのデートの時、何かあったりしたの?」
「……は?」
ホッと一息ついたのも束の間。
そういう風に訊くってことは、早川からは何も聞いていないのだろうけど、何をどこまで知っているのか分からないから焦る。
「……何かって何よ。早川の服ケチャップまみれにしたこと?」
「ケチャップまみれにしたの!? あーちん鬼……!」
「早川がそうしてくれって言ったみたいなもんだもん」
失礼な。
ドン引いたジト目をこちらに向けてくる川端さんをスルーして、喉をなかなか通ってくれないメロンパンをコーラで流した。
あまり深く聞かれてはちょっと困る。
「もー、そういうんじゃなくてえ、なんかこう、ラブハプニングみたいなあ!」
「あ、あるわけない!」
「だってだって、夏休みが終わってからずっとイズミールのこと避けてたじゃない!? 全然話してなくない!? 付き合いたての初々しい雰囲気出てたよ!?」
何を期待しているのか、キラキラした目で興奮気味にまくしたてた川端さんウザい。