バカじゃないのかこいつ。ケチぃ、ぷんすこぷんすこ! じゃないでしょ。劇の観覧許可やっただけでも感謝して欲しいくらいであるまったく。


体育館からだけでなく、むしろ私の人生から永久追放してやりたい。




「……なんかもう既に疲れてきた」


「えーっ、まだどこも見てないよお」




川端さんはうるさいし、翔くんは心臓に悪いし、狭い廊下のせいで知らない人にはさっきからちょくちょくぶつかられるし。


生徒のはしゃいだ声は耳触りで、目に入るものすべてが鬱陶しい。




「もう帰ったら駄目かな」


「だ、駄目駄目駄目……、やだ、駄目っ!」


「冗談だから離して」




慌てて私の手首を掴んだ川端さんが、必死の形相で引きとめてきた。その顔ヤバい。キモすぎて。


本気で帰るわけないのに。仮にも実行委員が。タマネギ姫間違った白雪姫の上演も見ずに帰れないっつーの。




パッと離された手首を庇うように摩りながら、あー消毒液ないかな、なんて考えていれば声にも出ていたようで、

「きらりはバイキンじゃないよぉ!」

と川端さんにぽかぽか腕を殴られた。あんまり痛くない。