「昨日も見た」
「えっ、そうなのー? ていうか翔ちゃん、今仕事中じゃないのお?」
「宣伝行って来いって言われたから」
そう言った翔くんが指さしたのは、童話カフェと書かれたプラカードを持って大声を張り上げて宣伝している知らない男子。
なるほどねー、見てくれの良い翔くんを連れて歩いて、女客引っ張りこもうって算段か。頭良いじゃん。売上半分寄越せ。
「じゃあ私らと話してないでさっさと仕事したら、あの人にまかせっきりにしないで」
「分かってる。……藤島が気まずく思ってないか心配だっただけだから」
「え、何の話!?」
「……か、川端さんの知らない話」
「そんなのずるいよぉ、教えてよぉ」
こんなとこで話せるか。
駄々をこね始めた川端さんの頭にチョップを食らわし、翔くんとは未だ目を合わせられない。……なんでそんな普通に私に話しかけてこられるんだよ。
「……じゃ、戻る。きらり、あんま藤島怒らすな」
「はーい、あーちんのことはきらりに任せてね! 翔ちゃん頑張ってね!」
何で私がお前に任せられなきゃいけないんだと思いつつ、小首を傾げて微笑んだ川端さんを睨みつけた。