……いったい翔くんはどういうつもりなんだ。私を困らせるだなんて何様だよまったくいい度胸してる。
顔にたっぷりバター塗りたくって気持ち悪くさせてやりたいくらいムカつく。
「――あっ、そういえば、今うちのクラス、翔ちゃんが接客してるんだよぉ、あーちん見にいく?」
「……は?」
「翔ちゃんのねー、長靴を履いた猫ちゃんのコスプレがねー、ちょー可愛いのお」
軽く握った拳を頬のあたりに持ってきて、ニャンニャンポーズした川端さんは、うふふと嬉しそうに笑う。
よく恥ずかしげもなくそんなぶりっ子出来るよなとちょっと感心した。
そしてそれが嫌味じゃなくほんとに可愛いから、余計ムカつく。猫ちゃんって言い回しもわざとかと思うほど癇に障る。とりあえず川端さんウザい。
「ねっ? 行こ? あーちんにも見せてあげたいのー!」
「察せよ、今私翔くんにだけは絶対死ぬほど会いたくないって顔に書いてあんでしょうが!」
「そうなの!? それ自分で言っちゃうの!? あーちんポーカーフェイスすぎてわかんないよお! ……ていうか痛い痛い!」
上目遣いでこっちを見てきた彼女のツインテールをぐいーっと横に引いて、理不尽な怒りをぶつけた。
翔くんの猫耳姿はもう見たし、特に興味もない。
会いたくない理由なら山ほどあるけどな!