だけど、聞く勇気がないなんて…。
あたし、彼女失格かもしれないな。
そもそもあたしは、彼女なのだろうか?
自分で勝手に言っているだけ?
そういえば先輩、言っていたじゃない。
他の男が好きになったら、行っても良いって。
いずれは優志先輩が、嫌になるかもしれないからって。
「……ねぇ、環奈」
「どうした?」
「…何で優志先輩って、あんなに臆病、なんだろう?」
「臆病?」
「優志先輩、言っていた。
自分が嫌いになったら、離れても良いって。
…どうしてそんなこと、平気で言っちゃうんだろう?
どうしてそんなに、恋愛に関して臆病なんだろう?」
あんなに、哀しげな瞳で。
怒りにも哀しみにも取れる瞳で、クレープ屋さんを見つめていたんだろう?
どうしてそんなに1歩、引いているんだろうか?
1歩どころじゃ、ないかな……。
「陽菜乃。
聞いてみると良いよ。
聞けるのは、陽菜乃だけだと思う。
ハルが聞いても、意味はないと思う。
ハルは村木先輩の友達でしかないんだから。
恋愛に関しては、彼女である陽菜乃だけしか聞けないよ。
私の予想だけど。
村木先輩は、何かあって、それのせいで臆病に見えちゃうんだよ。
その“何か”を受け止められるのは、陽菜乃だけだよ。
それとも陽菜乃は、その“何か”だけで村木先輩を嫌いになれるの?
確かにその度合いにもよると思うけど、陽菜乃はそう簡単に諦めきれる性格じゃないと思うんだ。
聞くのは辛いかもしれないし、陽菜乃にとっては辛いことかもしれない。
だけど、聞く勇気って言うのも必要だと思うよ!」
環奈…。
あたしは、控えめに頷いた。
正直、自信はない。
自分が全部受け止められるのか、恐怖心もある。
だけど、あたしは優志先輩が大好きだから。
頑張ろう。
あたしは、優志先輩の
……彼女になりたいから。