「初めてお母さんからユウを紹介された時ね、何て言えば良いんだろう…雷にうたれたような感覚になったの。
その時はまだ子どもだったから、それが何を意味するのか、わからなかった。

ユウ、よく華子と喧嘩していたでしょ?
あたしね、2人が喧嘩するの嫌だったんだぁ。
そう考えていたら自然に泣けてきちゃって。
あたしが泣くと、2人って必ず静かになるでしょ。
また一緒に仲良く遊んでいると、あたし凄く嬉しかったんだ。

小学生の時、同じクラスの人にからかわれたの、覚えてる?
特に酷かったのがユウだよね。
小学生のくせに、女子2人と一緒にいて、気味悪いって。
ユウって顔立ちが良いから、オカマって言われた時もあったよね。

あたしあの時、凄く嫌だったんだ。
でも、あたしの性格って内気だから、ユウのこと言うのやめてって言えなかった。
ユウは次第にあたしたちから離れて行っちゃうし。
あたしって無力なんだなぁって思い知らされたよ。

だけどユウ、言ってくれたよね。
『俺ら幼馴染なんだから、仲良くしても良いだろう』って。
凄く嬉しかったなぁ…あの時は。
ユウのこと、本格的に好きになり始めたのは、きっとあの時だな。

ユウへの気持ちが恋だって気がついたのは、つい最近だけど。
きっとあたし、ユウと初めて会った時から、ユウのこと大好きだったんだと思う。
世間で言う、一目惚れってやつかも。

あたし、本当に幸せだったんだ、皆に会えて。
華子はいつでもあたしの傍にいてくれる、大事な親友。
昇は今は疎遠になっているけど、元々喧嘩は強かったから、守ってくれた。

それでね、ユウ。
あたしはずっと、ユウのことが大好きだったんだ」






振り向いた雛乃は、これまで見たことのないような、満面の笑みで笑った。

ただしその頬には、何回も殴られたように、青い痣が目立っていた。





「ひな、の……?」

「ユウ、大好き。
ユウはこれからも、幸せになってね?」

「…どういうことだよ、雛乃。
何でお前、そんなこと言うんだよ…」





何故か理由は分からないけど、俺の目から涙が流れてきた。

俺は涙を拭うことはせず、真っ直ぐに雛乃を見つめ返した。