だけど、俺らの願いは、神様は聞いてはくれなかった。
昇はどんどん不良グループの仲間と化し、気が付いた時にはそのリーダー的存在になっていた。
どちらかと言えば地味な感じだったのが、どんどんチャラくなり。
学校も無断欠席が続き、先生も見捨てていた。
昇の両親はとっくに昇を見放しているので、関係ないと言うように普通に振舞っていた。
俺は今まで通り、昇を見かけたら声をかけるようにしていた。
だけど、華子や雛乃は昇をもう“不良”と言う目で見て、昇に話しかけようとしていた俺を何度も止めていた。
「何するんだよ」
「ユウシ、昇にはもう関わっちゃ駄目だよ!」
「華子の言う通りだよユウ。
もう昇は、あたしたちの知っている昇じゃないの。
ユウだって良い加減、気がついているはずでしょ?」
確かに、昇と関わると、良いことがないって聞いたことある。
喧嘩なんて日常茶飯事で、いつも傷だらけ。
何度も警察に補導されているらしい。
俺には聖志がいたから。
もし俺が補導でもされたら、聖志の将来や評判にも関わる。
俺だけが転落するわけじゃないから。
両親も、毎日朝早く出掛けて、夜遅くに帰る。
何事もなく暮らせるほど、裕福な暮らしではないから。
家族にも、華子にも、雛乃にも。
迷惑はかけられない。
だから俺も、徐々に昇に話しかけるのをやめていった。