じーっと睨むようにみつめあうこと数十秒。

折れたのは、智明じゃなくて、私のほうだった。


「もういいっ!」

呆れたようにため息を吐きながらそう叫ぶと、私はクルリと方向転換。自分のクラス、つまり2組へと戻ろうと足を進める。

「あ、おいっ!なんだよ、教えろよ!」

慌てて智明は手を伸ばしたようだけど、その腕は空を切った。

一方ゆりあと尾島くんは呆然と突っ立っている。


「ちょ、待てって!気になるだろ?」


ガシッと強く腕を摑まれた瞬間、ぐいっと顔をこちらに向けられる。


「なんでもないってばっ!」

「なんでもないことないだろ?」

「もー、うるさいなあ。HR始まっちゃうじゃんか!」

「お前が話しかけたとこを途中で切るからだろ?!」

拗ねたように唇を尖らせて文句を言う智明。

なんでそんなに気になるのか・・・。

「とにかくっ!は、な、せっ」

ぶんっと思い切り腕を振り払う。

「ちょ、待てよ!」と話しかけてくる智明を無視して、私は自分の席へと戻った。