「あ、稀瑛!」

3組へと入ろうとした瞬間、後ろから声をかけられて振り返った。

そこにはさっきまで隣の2組にいたはずの智明の姿。

ニヤけたその顔に、私は少しだけ嫌気が差して、はあとため息を吐いた。


「なに?・・・その面構えは。」

「面構えて!」

ケラケラと愉快そうに笑いながらも、近づいてくる智明。

隣ではゆりあが深いため息を吐いている。

そしてそっと、私の耳元でこう言った。

「どうしようもないね、アンタと久保田の腐れ縁。つーか、アイツ絶対うちらが3組入ろうとしてるとき、声かけない?」

私の気の所偽?なんて、自問自答しているようだけど、ゆりあの気の所偽なんかじゃない。

コイツ・・・。


「絶対、邪魔してるだろ。」

「え?なんのこと?」


ほら、誤魔化しやがった。

腕を頭の後ろで組んで口笛なんて吹きながら歩いてくる智明。


「俺は、おじに会いに来たの。」

「おじって呼ばないでよっ!」

おじっていうのは、尾島くんの愛称。

ていうか、私はそんなの気に入ってないし、おじって呼んでいるのはコイツだけだ。

絶対に、私への嫌がらせに違いない。